2007年、乱暴な言い方をすれば「キャラクター性を持ったニコ動のオモチャ」として
ボーカロイドの音楽が聴かれうる音楽シーンが誕生しました。
初期のことを掘り下げればキリがありません。
が、最初の2年間は激動かつ濃密なシーンの流れが存在し、
この2年間でボカロシーンという未開拓の畑は急速に、豊かに耕されていきました。

ここからの記事では、最も語られがちな黎明期を一旦スキップして、
2009年後半からの自分のボカロ観測を書きたいです。



2007年にシンプルな名曲・普遍的な名曲が多数生まれたことを始点とし、
2008年に入るとそれぞれの製作者の矜持により様々な方向性でボカロの楽曲が作られることが提示され、
2009年にはそこから地続きの発展で、創作的野心の発信の場としてのボカロシーンが進化していきました。

特に2009年下半期は、ボカロシーンがアカデミックに聴かれうる”コアな音楽”の追求と、
10代のマジョリティに力を持ちうる”10代的な最先端の音楽”の開拓が、同時並行的にされた時代でした。



”10代的な最先端の音楽”とはJust Be Friends、裏表ラバーズ、1925など今も馴染み深い楽曲の数々。
それに対してコアな音楽に対して単発的ではなく積極的に盛り上がる流れは、
この時期までの特有の雰囲気だったと思います。以下あくまで一部例

Drain / Treow(逆衝動P)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm8132511

三角を床に描き 四角を付け足して / 音楽性の違いにより解散しました。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm8112197

A Song For Your Melodion / whoo
http://www.nicovideo.jp/watch/sm8586222

The Ghost of Romantic Tranceiver / kiichi(なんとかP)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7215797

Fight For Free / 泡沫P
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7232278

少女、鬱に現る / あぼんギャルP
http://www.nicovideo.jp/watch/sm8264655

Persona Alice / ハチ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7223030

独言哲学 / 盛るP
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7875350


この流れは細く残り続けはしますが、この後に来る巨大な商業化に押し流されていきます。



さて、2009年末に起こったいくつかの変化は、
前述の”巨大な商業化”に直接関わるわけではないですが、第一段階として
以下の3つがそれまでのボカロシーンを大きく変えていきます。

〆遒蠎蠅亮舁SNSが「にゃっぽん」からTwitterへ
にゃっぽんとは何か!
ボカロP・絵師・動画師などの作り手とコアなボカロリスナー(当時は聴き専という呼称)が、
一同に会するmixiのようなSNS、と言えると思います。
ここで製作者・リスナーが日記を書くことを介してボカロ曲を話題にし合ったり、コラボを持ちかけたり、
2chのボカロスレと並び、話題の渦を起こす役割を果たしていました。

「にゃっぽんであるが故の利点」 
・それぞれの人のページから過去の日記を漁るという形で、情報やデータを遡って採集・整理しやすかった
・話題の渦の発生が作り手主体だった
・多数決ではない評価軸を確立できた

TwitterだとTLが流れていくんです!!!他人の過去の発言を探すことには向いていないSNSなので、
「今・現在まさにという盛り上がり」しか観測できず、シーンの文脈がつかみづらい。

また、2009年は特に、「こういった音楽が伸び、こういった音楽は伸びない」といったシーンの偏重が薄く、
それぞれの音楽を作る人 が過ごしやすいバランス感覚のようなものがシーン内にあった。
このジェンガのようなバランスを制御していたのがにゃっぽんであったように感じます。
それは、多数決では決して為し得ないバランスだったと思います。
対してTwitterは多数決の動きを見るのに特化したSNSで、対照的です。


▲縫各阿離螢縫紂璽▲襦将棋盤出現
2009年10月にニコ動がリニューアルして、「VOCALOIDカテゴリ」が爆誕します。
それは喜ばしいことだったのですが、「東方・アイマス・ボカロ」が一絡げに同じ大カテゴリとして括られ、
更にはランキングページを開いた一発目にこのような碁盤の目が表示されるようになります。
615104 その後の改変に比べれば、これ自体は決定的なものではないのですが、「限られた上位作品に注目を絞る」傾向が顕れ始めた変化でした。








アイドル的な歌い手の出現
2009年下半期は「歌ってみたが衰退した?」などと「歌い手衰退論」がありました(どこも同じですね・・・)
黎明期の歌い手が軒並み勢いを落としていたことがあったようですが、
その裏ではニコ生などでのコミュニティ拡大を進め、潜在的に発展を狙っていた新世代勢がいました。
 後の√5勢を中心とする、今の「歌ってみた文化」を直接的に形成したアイドル的人気を持つ歌い手層です。
ここら辺が2010年に入って一気にドカドカと顕在化していき、
「歌い手が歌って原曲のボカロ曲(大抵は元々が有名曲)が更に伸びる」という現象が生まれていきます。 


さて、ここら辺で愛想を尽かすボカロリスナー(聴き専)も多かったのではないでしょうか!?


あらら、こんなに長くなった・・・黎明期でなくても、8年9年を振り返るのはとても難しい作業だ・・・(時間を下さい!!という言い訳)